Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

Entre la poire et le fromage

<Entre la poire et le fromage> これ、どういう意味になるのだろう?

 フランスでは、料理店のメニュー構成は一般的に「前菜、メイン、チーズ、デザート」の順。ワインも食前酒、白、赤ときてメインが終わる頃には最高級のランクに上りつめる。

 美食家ブリヤ・サヴァランは言った。「チーズのない食事は、片目しかない美女のようなものだ」。空港の名前にもなっているかのドゴールさんをして「(こんなに何百種類も)沢山のチーズのある国を統治するのは容易でない」と言わしめた。その数246とも、365とも、600とも言ったという説があり、どれが本当か分からない。

 レストランではサーヴィス係がワゴンでガラガラと何種類ものチーズの載った皿を運んできて、それぞれを説明し、客の好みに応じて切り分けてくれるらしい。

 私など、前菜もメインの肉や魚もいらない、チーズさえあれば三日三晩生きていけるくちだから、いったい何故この順番で?と思う。程良く満たされた腹に、アヴァン・デセールとデセールが控えているのでは、おちおち楽しめやしない。

 が、物事にはちゃんと訳がある。チーズには二日酔いを緩和したり、満腹となった胃の消化を助ける働きがある。胃も満たされ、会話も弾み、ほっと空気がくつろいだ頃、格上げされたワインとともに、ナイチンゲールの微笑みのごとくチーズはおとずれる。

 デザート(フランス語ではデセール)で、洋ナシを使うメニュー:洋ナシのコンポート・タルト・赤ワイン煮・シャーベット・ムースetc。甘いものは苦手で、実は詳しくない。

 さて表題の<Entre la poire et le fromage>、直訳すれば<洋ナシとチーズの間>。

 チーズの後、デザートが出てくるまでの間。フランス語で<リラックスした頃に>という意味合いだ、と辞書には載っている。

  ぼちぼちエッセイを書き綴っていこうと決めた。理由はいくつかある。昨年単身パリにやってきて、これまでも何度か滞在記のようなスケッチは書きとめていたが、どれも本業に差し支える懸念があり、こうした形では公開できなかった。

 ただ、季節が巡るうち、これも無限の中の一度なんだ、ある程度、形として残しておかなければ消え去ってしまうんだ、と記録の必要性を感じたことにある。 

 基本的には、個人が見たり感じたりしたパリでの日常風景である。文章として公開するに当たって、幾つか方針はある。

 まず時事ネタには触れないこと。大統領のスキャンダルは新聞とテレビに任せる。それから個人的経歴、反省文は書かない。人生後悔の嵐だが、言いだしたらきりがない。振り返っても、反省といい訳はしないこと。そして批判をしないこと。社会全般に対しても、隣人やごく近しいレベルにしても。批判・批評は、実は簡単だ。だからそういうもので、このスペースを埋めたくない。

 これらを忠実に守ってブログを続けようとすると、書ける事象が殆どないことに気づく。つまり自分の話をせず、あなたにもほぼ関係なく、かといって社会に目を向け「より良い明日を探ろう!」と、殊勝な心意気があるわけでもない。

 要は「聞いても聞かなくてもいい話」「それほど重要ではない話」に限定される。ハッキリ言って、ただのひとりごと。それでいい。ゆる~く、どっちでも構わないんだけど、というテーマを、気の向いた時に(ホントはそれじゃマズい)アップしていく。

 上司との会合の席でなく、気の置けない仲間と夕食を取り、ちょうどメインも終わった頃。極上のワインとチーズも楽しみ、ほっと和んだ空気の中で――楽しんでもらえたら、という気持ちで。

<Entre la poire et le fromage>=リラックスした頃に。

 そんなわけで、ここから始まる一連のエッセイ群に、このタイトルを名づけようと思った次第です。

f:id:kotorio:20140715155333j:plain