Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

パリダンサー図鑑(4)ミュージカルダンスキャプテン!舞台人――Fabrice Cazaux(ファブリス・カゾー)

 大好きなミュージカル『マンマ・ミーア』のダンスキャプテン!と聞いて、でかけないわけにはいかないでしょう。これまでバスティーユにあるスタジオハーモニーを中心に紹介してきたが、徒歩でものの5分とかからない場所にもう一つ有名スタジオ、Le centre des Arts Vivants がある。Martine Curtat-Cadetという女性ジャズダンサーが1992年に創設した、国家承認のダンサー養成学校。実はマルティーヌ女史のジャズのアドヴァンスクラスも受けたけれど、殆ど女子高のノリ(キャピキャピ)で期待はずれ。ただ本人はさすが振付家、女優、パリシャトレのソリストとならしただけあってジャズの魂みたいな女性である。一挙一動がことごとくスイングしてる。個人的なことで申し訳ないが、ワタクシ、中学ダンス部の鬼女性顧問を思い出した。

 このスタジオで週2回、ストリートジャズとリリカルジャズ(Lyrical Jazz:クラシックとジャズのテクニックをベースとする。身体の収縮、配置と呼吸バランスが特徴。エネルギッシュかつ歌詞リズムにのせた動き)を教えるのが、冒頭のFabrice Cazaux:ファブリス・カゾーである。マンマミーアの最後の2年間、ダンスキャプテンであったーーで始まる彼の経歴を紹介しよう。おお、またもイケメンすぎる。

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Extraits Du Spectacle Musical "DE PARIS À L.A VIA ...

 パリ、モガドール劇場などを始めコレオグラファーとして名高いファブリスだが、振り出しはディズニーランドパリのダンスキャプテンからである。小柄で、切れた顔立ち、高い身体能力は舞台のどこに居ても観客の眼を惹きつけずにいられない。(2013年には将来のパレードダンサー募集のオーディション振り付け等も担当)ゴールデンタイムのFrance3、XFactor、 Champs Elysées (France 2)、Amimicalement (TF1)など、テレビ番組での振付の仕事を多くこなしている。

 ダンサー兼コレオグラファーで活躍の一方、リック・アダム養成所で国家教師資格「ジャズ」で取得、ボルドー音楽院、バレエ学校での研修を経て単身渡米。NYブロードウエイダンスセンター(BDC)ビザスチューデントプログラム。とあるため、3カ月~1年程度は、正規ビザ学生として本場ジャズをたっぷり学んできたのだろう。私がクラスに行った時も流暢な英語で話しかけてくれた。フランス人というより、小柄なのに、アメリカ人らしい構えがある。NYブロードウエイの役者さんっぽい力強いオーラがある。

 フランス帰国後、スタジオハーモニー、ヴィヴァン始め、国内主要都市で教えてきた。モダンジャズ、ストリートジャズ、リリカルジャズを得意とする。彼の本領は、「(上記3種の)異なる技術・エネルギーをミックスさせた新スタイル」と評された。とてもダイナミック、かつフランスではモダンに写ったことだろう。 

 リリカルジャズの振り付けはスローにも関わらず、とにかく宙を切って飛ぶ、回る。小さな身体からほとばしるように、音楽を全身で浴びて、彼自身が音になってしまったみたいに見えた。緩急のメリハリがしっかりとしていて、一か所も「流れて」しまう部分がない。どんなに短い振りでも内的思考に陥らず、常に観客を意識しドラマ性に満ちている。それが可能なのは、たぶん彼に揺るぎない古典の土台と、多くの舞台経験があるからだと思う。学校出ました、教師になりました、じゃこうはいかない。

 彼の情報は意外とヴェールに包まれている。アッと思ったらNYだのカナダだのに居たり、どこぞの劇場で主演していたり、テレビの振付をしていたり、神出鬼没。ネットで名前を検索しても殆ど出てこないようになっている。この夏もどこに居るのか分からず、フェイスブックで現在地はモントリオールの模様。生徒集めに走ったり、情報垂れ流したりしていない分、余計、イケメン度も、気になって仕方ない度も増すクール作戦。彼の実力、能力、実績からして、どうもフランスに留まってクラスでちょこちょこ教えているのはもったいなすぎて悔しい。NYのほうが、よっぽどこのタイプは活躍の場がある。


Choré Street Jazz "MORE" Usher By Fabrice CAZAUX ...