Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

juillet(ジュイエ)2014/フランスの7月を開けた本

 フランス語で「7月」はjuillet(ジュイエ)、ユリウス暦のJulius Caesar(ユリウス・カエサル)にちなんだ名称で各国呼ばれているらしい。先週バレエのクラスで、大のベテラン教師が「キャト~ズ・ジュイエ~」「キャト~ズ・ジュイエ~」と大声で叫んでいたから、何かと思って覗いてみたら、回転⇒ジャンプの時「そこは14 juillet(7月14日)なんだ~~フランス革命記念日に上がる花火のように激しく飛べ!高く!もっと!歴史的に!ハイ、7月14日~~~花火~~上がれ~君たち~~」と、ピアノ伴奏すら無視して、熱く叫び続けていた。あの場にいた全員の中で、花火だったのは教師のほうである。仏語例文の使用参考例として心に留めるべきかと思ったが、今後使い道はなさそう。

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 7月・8月はバカンスシーズン、5週間の休暇が定められているとのこと。パリからごっそり人がいなくなり、代わりに英語の飛びかうツーリストの街となる。

 夕方、ダンススタジオに向かうメトロ5番線の途中、オステルリッツ駅から青年が乗ってきた。20代後半から30代半ばぐらい。皮のカジュアルサックから、ペーパーバックを取り出して読み始めた。スマホか、割にkindle率が高いので、紙の本は珍しいなあと思って表紙を見て、ビックリした。何故なら、私がまさに、今手にしている文庫本(もちろん日本語)の、仏語版だ。なんという偶然。私は反射的に自分の表紙を彼に突きつけた。仏版とデザインは全く違うが帯に著者の名前がローマ字で書かれている。相手は「Ohh!」と驚きの声をあげた。

 私は三つ目のバスティーユで降りた。「さよなら、◎×▼」(主人公の男の名前)と言った。相手も「さよなら、元気で、△◎×」(主人公の女の名前)。

 この本のタイトルだけは、どうしても恥ずかしくって、明かすことができない。もちろん仏訳されているぐらいだから、日本でもたいていの人が聞けば「ハイ、ハイ」とワカってしまう作家の、フツ―の現代小説である。間違ってもミシマとか、カワバタとか、タニザキといった「文豪系」「ノーベル賞」、日本研究してます系ではない。また、著者本人と直接知り合いである、あるいは何らかの利害関係が生じると言った面倒な話でもない。ただ、えっ、このタイミングでアンタそれ、読んでたか??みたいな、こっぱずかしさがあり、もしかしたら相手の青年もそんなもんだったかもしれない。こういう時にどうして『百年の孤独』とか『二都物語』とか『ハワーズ・エンド』ではなかったのだろう。ポール・オースターやジョン・アーヴィングとかだったら、普通に言えたんだけど。

 今月は夏のダンススタージュを乗り切る1カ月間。乗り合わせた青年と、日/仏同じ本を読んでる、そうあることじゃない。今月も頑張ろうぜってメッセージが、何かこの本の中にあるのだ。そう勝手な解釈をあの青年もきっとしていると信じて。Merci.