Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

Yanis Marshall ヤニス・マーシャル2014夏パリ:怒涛のスタージュ実況編〈その2〉初日ストリートジャズ

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 汗だくのアップをさくっと終えると、コレ。生徒の顔ぶれも心なしかいつものメンバーより、一見さんのほうが多いぐらいだ。バカンスとってるのか、彼の両腕君たちもお休み。3日間は彼一人でやるのかな?(メディ君のフェイスブック見たら、泳いでた・・・)終えたら即、今週末から英国マンチェスターへ飛ばなければならない多忙の身。

 フロアはいつもの木板のFじゃなく、ちょっと大きめ地下C教室(蒸し風呂)。振りは4つ候補があって、どれにする?ってみんなに聞いて、私は彼が最初に上げたレディ・ガガの『アプローズ』に手を挙げたんだけれど、希望者はおらず、こちらの振り。『THE FREAK SHOW』ブリトニー・スピアーズです。


"THE FREAK SHOW" YANIS MARSHALL. DIRECTED ...

 相方が二人とも居なかったけれど、プロモーションビデオにも出てる女の子(よくクラスにいる)が来てくれてたから、彼女がセンターで引っ張ってくれて、助かった。3日間は最前列、とにかくヤニスの右か左に行こうと思っていたから。というのは、彼は「リーニュ・シャンジェ」=前列と後列の入れ替え、をたぶん私が知っている限り、指示したことがない。後ろの人たちはプロフェッサーの動きが見えないから、途中で交替させる紳士的な先生もいる。ニコラなんかはそのタイプだった。ヤニスはそういうことに時間を使わない。やりたい奴は自分で前に出てきてるだろうし、ただのファン(ヤニスを見たいだけとか)途中で力尽きてしまう人は、最初から後ろに居るからだ。

 実際、最前列に居る時と、うまくスペース取りができなくて後ろにまわっちゃった時なんかでは、1レッスンの収穫度が天と地の差だ。こちらのモチベーションのコントロールでどうにもなるだろうとお叱りを受けるかもしれない。でもスペース取りは、やはりある種の「才能」だし、ダンスレッスンにおけるその日の重要ポイントである。体調万全、レッスン着も靴も髪もOK、でも場所どりで失敗したら、結構見返りはキツイものがある。

 前に行ったら絶対に間違えない、隣の人よりこっちが速く振りを入れてやろうと思うし、上手い人、踊れる人ばっかりだからなにくそ、と必死になる。でも後ろにいる時というのは、心のどこかでやっぱり緩んでる。前のあの人見りゃいいや、とか、あの人うまいんだけどあそこずらしてるのわざとなのかなー、とか、余計なことばっかり考えている。だから本気で集中するためにも、間違えてもいいから出る必要がある。一つは自分のためだけれど、もう一つに、こちら(欧州)では、きちんと周囲に自分の存在をアピールしていく、という目的がある。その教師の踊りを踊っていなければ居ないのと一緒。だから、「自分は(チビだけど)ここにいるんだ、あんたのクラスに出て、力はこれぐらいのモノをもっていて、90分集中してます」ってとこを、教師だけでなく、同列に並ぶ同じぐらいのレベルの周囲のメンバーたちに、無言で認めさせていく必要がある。すると不思議なもので、踊っている時に「がっ」と音をたてて、その辺の何人かと空気が一緒になる瞬間があったり、急に教師がフリーを8カウント×2とか3ぐらい指示した時に、同じ呼吸の人間を見つけて(向こうも必ずこちらを見つけてくる)ペアになって即興ができる。こういう経験は、さすがに日本では得られなかったものだ。

 さてこの曲。今日は全てフランス語で進んでいった。だいたい「4」の繰り返しになっているから、アン・エン・ドーの「エン」(音ハメ)でしっかり動きが振り付けられている。そこが合わない。今回、ヤニスは何度でも「違う!!」と声を張り上げすぐに音を合わせようとしない。口でカウントを繰り返し、4×4×4×4×、身体で覚えるまで。何度でも。「ダメ!!頭から。違う!頭から!!」の繰り返し。しつこいぐらいやったあと、さらにrapid(ラピッド:速く)。いつもは歌詞で振りつけて行くことが多いけれど、これは聴いてもらうと分かるように、『ダン・ダン・ダーン』という<リズム>の繰り返しが基調になっているのだ。それで今回はカウントでガンガン、どんどん、速く。ゆっくりでできても、速くなった時についていけないということは完全に振りが身体に入っていないということだし、で、速くなって雑になってしまった部分を、もういちど、ヤニスのカウントに合わせながら「doucement」(ドースモ:ゆっくりと)、確認させるようにやらせる。この繰り返し。これ、物凄く有効な手段だと常々私思っているやり方。(かつて自身でも20代の頃「身体的・柔軟性では負けないのに、振りがはやく覚えられない」と他人と比較して落ち込んだことがあった。その時にやっぱりこういうやり方で、辿り着いた経緯があるから。)

 で、いざ音楽と合わせてみると、はるかに音楽のほうがゆっくりで、驚いてしまったぐらいだ。(普通に聞いたら速いはずなんだけど)だから、みんな、気持ちに余裕がある。「エクテ!」(ちゃんと聞いて!)と耳に手を当てるしぐさで指示するヤニス。この時点ではみんな既に振りが入っているから「音をどういうふうに扱えばいいか」に気持ちが集中できる。カウントを離れて、各自「表現」をどう持って行けばいいかだけを考えることができる。一回ヤニスがデモを見せたあとで、プルミエとドゥージエムに分かれて何度か。その後さらに、後半の振付を加える。何度も繰り返した個所は36秒前後の腕の振付の部分。

 最後は1:56あたり、床に寝た状態で振りを終わらせてあとはフリー。映像見てもらえば分かると思うけど、回っても飛んでも絡んでもいいから好きに踊ってね、とのこと。米国ブライアン・フリードマンの講習会の映像なんか見ると、1分とか2分とか「もたないんですけど」ってぐらい長場のフリー演技で、得意技で自分を表現しまくっている。ここおフランスで少々控え目かと期待したが、みんな汗だくTシャツで他人に馬乗りになって絡んでました。

 クラスの終わり、ヤニスはそんなみんなを、少し逞しげになった瞳で満足そうに見つめている。 


YANIS MARSHALL CHOREOGRAPHY. &quot;APPLAUSE ...

上はF教室、却下された、私の好きなレディ・ガガ『アプローズ』。コレの様子がよく分かる。「ここはとても速い!」「2回ね」

下はVimeo本人サイトから。DEJA VU" BEYONCE. パリ市内のお洒落な各地、ヤニスの茶目っけのある表情や、仲間との笑顔が満載。この歳で素人ながら、フランスらしいエスプリきいた一本に仕上がっている上等の出来だと思う。洋服選びのシーンもヤニスらしさ溢れ、キュート。お店は撮影場所でも出てきたポンピドーセンター近くのマレの『addicted』という小さなショップです。

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ORIGINAL CONCEPT & CHOREOGRAPHY BY YANIS MARSHALL. "DEJA VU" BEYONCE. DIRECTED: FERNANDO DE AZEVEDO from Yanis Marshall on Vimeo.

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 ――<その3:2日目ストリートジャズ、モダンジャズ編をお楽しみに!>