Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

フランス、『ダンスコンテンポラリー』の国 

 ダンスコンテンポラリーの先生がバカンス7月組だったので、8月はクラスがある。ストリートジャズがなくなる6週間、コンテも悪くないと早速、出てみた。この浮気っぷり(というフランス語、いや日本語もあるのかどうか)の速さ、ごめんね、教師J。(←私のジャズの先生)

 フランスはやはり「ダンスコンテンポラリー」の国だと感じる。80年代、ベジャールやプティなどのバレエを基調にした振付と袂を分かつ新しいムーブメントが「ヌーベルダンス」と呼ばれた。アメリカのモダンやポストモダンダンス、日本の舞踏の影響をふんだんに取り入れ広がりを見せた。1978年には国内初アンジェに現代舞踊振付センターが開設され、バニョレ国際振付家コンクール(現在はセーヌサンドニ国際振付家ランコントル=出会いの場に名称変更)が始まったりして一気に花開いたわけだ。フランスは、それまでの『常識』を覆す作品を次々と発表して、新進振付家の宝庫でもあった。どんなダンスから出発し、影響を受けていようが、最終的には『アンディビジュアル(個人)のインスピレーションに基づき、新しい道を開拓しようと挑戦する』ことに価値を見出した、それがコンテンポラリーダンスだった。

 マギー・マランやプレルカージュなど、フランス的エスプリの利いた多くや、喜劇的作品、自己の内面を描くことができた。毎年7月の第一月曜には、パリ市立劇場の前に長い行列ができた。来シーズンのコンテンポラリーダンスの前売り券を求める人々である。前衛かつ挑戦的な最も有名なカンパニーの券を手に入れるため並んだのだ。

 そんな熱の時代も過ぎ去り、今は少し落ち着いているように思う。私見だが、ダンスの幅がストリートなど他のジャンルに分散され、若い世代は自己表現に当時ほど「コンテンポラリー」にしがみつかなくてもよくなったのだと思う。ユーチューブ、フェイスブックで個人での映像発信時代に、さすがにカンパニーに縛られる不自由さをあえて選ぶ必要もないのかもしれない。ストリートのように、手っ取り早く多くの人に『共感』される音楽、映像、振付が好まれ(『いいね!』が押される)内面や魂の『共振』は特に求めても求められてもいない、そういう気はする。

 それでも敢えてやはり、フランスは根強く「コンテ」の国、と思う。政治制度とか、国家とか持ち出すまでもなく。普通にスポーツジムに「コンテンポラリー」のクラス90分、120分が存在しているってのが、凄くないか!!

 40代後半ぐらいの女性で、先月、別のダンススタジオでコンテクラスで一緒だった。一番前で誰より汗を流し、気合のある踊りをしていた。鍛えられた筋肉、体育会系の男気とで、独特の魅力を醸し出している。振付もきびきびとして、大きな世界を描くから気持ちがいい。ジャズファンクやストリートジャズの男の先生でも、女々しかったり小さな内的世界に留まっている先生だって結構いる。見ているとそういうのはわりに分かってしまうものだ。女一匹、もののけ姫のように強く逞しく(笑)独自の道を貫いている――というのが、殆ど生き方が反映されているようで、知的レベルの高いフランス人のツボにははまってしまうのかも。生徒の質が全然違う。つまり、着ている服装から年代から、髪型、顔つき、身体に至るまで、ことごとく異なる。例外的にシマダジュンコのファッションショーみたいな衣装の人もいたが、殆どの生徒は、動きを妨げない緩やかな服装、膝当てサポーター。ストリートクラスのように、太めでエネルギーだけ持ち合わせてます的若者はおらず、やはり徹底的に訓練を積んできているのか、身体柔軟性が平均して高い。開脚完璧。それができて初めて表現のスタートに立てるのがコンテ。表現するのにふさわしい身体があり、それを作るために、最初の1時間はその先生独自のメソッドでのトレーニングになる。

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 数年前、野球選手のイチローがインタビューで言っていたのを思い出す。「腹が出たら、野球を辞める」。野球はそういう体型になっても続けられる数少ないスポーツで、米国世間は認めても、イチローの美学には、反するのだろう。その歳で腹筋を始めた、とも。

 ギエムは「身体のどこかが痛くなかったことなど一日もない」という。

 先月中旬からモダンとコンテを急に増やしたところ、背骨とお尻の骨に痛みが走るようになった。もともと背骨の真ん中あたりと、お尻は仙骨が出っ張っていて、痩せてくると腹筋でも痛いぐらいだが、コンテの振付で床をごろごろしたり、後転を繰り返すだけでかなりしんどい。若いころと違って、骨と骨の間がすり減ってるんじゃないか、とか、あまりに床に強く打ち付け過ぎるんじゃないかとか、自分なりに原因を考えた。それがここ2~3日でベッドで寝がえりも打てないほどに酷くなった。腰(お尻の裏側)全体と、骨盤の横あたり、つまりGパンなんかをヒップではく時の位置の骨、それから太もも前面に筋肉痛のような痛みが来て、ようやく「あ、これ骨じゃないかも。神経かも」と思うに至った。さすがにパリで接骨院にもカイロにもいけず、ましてやダンサー専門どころは、仏語で探すのは能力的に不可能、ネットで調べているも今のところ、神経の圧迫説が有力か。日本で愛用していた市販の患部クリームが欲しい・・・。ううっ。フランス国に身近にあるコンテ、舐めてかかると大変なことに。

 フランスで「コンテ」が普通に根付いているのは多様性の存在じゃないか。日本でコンテのクラスに出ていても、周りは全員日本人だしみんな同じ踊りをして、教師やクラスを変えても根源的な差はなく、当然闘いも淘汰もされない。でもこちらでは、人種も背景もみんな違ってそれぞれが「個」を打ち出す手段としてあるから、生ぬるいことはしない。妥協すれば自分を自分で低くすることになるからだ。フランスで踊るということ、それはいつも自分や周りとの戦いでもある。フランスという国が生み出したコンテは、それが一層じぶん自身に求められるダンスなのだと思う。