Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

The Summing Up:サミング・アップ!

 『劇作家としても小説家としても成功した64歳のサマセット・モームが、生涯を締めくくるような気持ちで書きあげた回想的エッセイ集』。といっても、本人はその後、91歳まで長生きしたし、その後、バリバリ人生の妙をつくような短編も書きまくった。巨匠、こちらはパリに居ても、フランスかぶれなんかしていませんからね(笑)モームがいくらモーパッサンに影響を受けていたとはいえ、機知、ウイット、どれをとってもモームの英国風としか言いようのない、深い人間眼にうなされる。『コスモポリタン』も、読み返すたび新しい気づきのある、読者側の成長とともに読み方が一変するようなショートストーリーで、O/ヘンリーの温かみともまた別。

 f:id:kotorio:20140816150623j:plain  Somerset Mougham/The Summing Up (1938)『サミング・アップ』

 現在、モームがこれを書いたより一つ年上と思われる日本のあの作家(65)の、あの作品が先週英国で発売、ロンドンでは深夜のカウントダウンとなったが、その小説世界を英マスコミ(新聞)は酷評のよう。9月4日にはフランスで発売予定。

 こちらは『The SUNDAY TIMES』文化批評欄。

 Colourless Tsukuru Tazaki and His Years of Pilgrimage by Haruki Murakami trans Philip Gabriel | The Sunday Times どうも作品の比喩が冗長、鼻に付く、筆者の怠慢、疎外感に苦しむ日本の若い男、という主人公がどうにも陳腐で仕方ないらしい。他紙では――、いや、やめておこう。

 書かなくては、と思う。今日書かない奴は、絶対明日も書かない。一般的な私たちは(つまり超人気売れっ子作家で、世界の殆どがその名前を知っていて、ニューヨーカーとかに連載を持って一日13時間ぐらい書きまくり、自分の時間がない、もう、パソコンに向かうのも吐きそう、とかいう状況、でない限り)「締め切り」がないわけで、となれば、なんだかんだ理由を付けて「書かないでいる選択肢」もありうるわけで。私みたいに、パリが寒くなってきたとか、怪我した腰が死にそうに神経を圧迫するとか、やる気が起きない、なんてのは論外で(笑)

 という訳で『サミング・アップ』を密かに手に取り、自らを鼓舞する、8月後半のわたし。パリはもう、朝が寒い。10月の第一週、新しい朝の連続ドラマ小説が始まった朝に似ている感じ。タートルネックとジャンバーを着こんで、構想を練るためノートを開く。