Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

グラナダホームズ第20話 The Six Napoleons(六つのナポレオン)

 
実はこの回の見所レストレード警部。ドイル56短編小説中32番目の発表作品。

【ストーリー】ロンドンでナポレオンの石膏胸像が連続して壊される事件が発生。1つめ=ケニントン・ロードのモース・ハドソンの店に置いてあったもの。2つめ&3つめ=ハドソンの店から胸像を買ったバーニコット医師の自宅と分院で壊されていた。

 翌日4つ目=ピット街の新聞記者ホレス・ハーカー氏の家、玄関先でが殺されている。像も壊されている。

 レストレード警部は殺された男の身元を、ホームズは壊された像がどこで作られたものか調べる。双方の調査が1つの事実へ。コロナ王女の寝室から盗まれた「ボルジアの黒真珠」を巡るベルーチ・ファミリーの悲劇へと終結する。

*************************************

 いやいや、全19話観終わっただけで、まだ半分だけれどすっかり★★★★★5つ!

 児童書で子供向けにも人気の話と知ってはいたけれど、なるほど、ストーリーの核がしっかりとして、飽きさせない。さらにグラナダ版ならではの変更と映像的楽しみがいっぱいの回なのだ!

 ジェレミー・ブレットが明るく、はつらつとしたホームズを演じる。ワトソン、レストレード警部、3人そろったシーンの会話がテンポよく何故かコメディ。真面目一直線の仕事男レストレードが、この二人にかかると喜劇に。「ホームズ&ワトソン+レストレード」という捜査パターンに変わりはないのだけれど、この回に置いては精神面で「ホームズ(天才)+ワトソン&レストレード」という構図になっているところがツボ。

 *ああ、これが有名な「ハンバーグ誤訳」事件(笑)。

 ワトスンがレストレードに「ハンバーグでもどうぞ」と日本語字幕で進めたそうだ(笑)humbug:ハムバグ=これは飴だよ!humbug is a striped candy/sweet 

ハッカっぽいしましまキャンディー。

 

 *グラナダ版の成功は、聖(正)典で掴みづらかったイタリアンマフィアの存在を明確にストーリーに組み込んだこと。筋が通って、分かりやすくなっていた。イタリアマフィア映画さながらに。

 *在英外国人の当時の背景。ドイツ人はホワイトカラーだったんだろう。イタリア人はおそらく大量流入して、労働者:ブルーカラーの色が強かったのかも知れない。

*「2分で来い」と前話「もうひとつの顔」での仕返し(ホームズに5分で来いと言われたから)をするワトソン。

*ベイカー211の部屋で、ホームズの肱掛椅子に座って待っちゃったりしてるレストレードがかわいい。二人が敢えて彼のプライドを傷つけないように帰ってきたシーンをやり直すところも。

*これが噂のテーブルクロス引きか。見事。

*いやあ、やはりラストです。これまでコメディだったレストレード警部が、改めてホームズに敬意と称賛を心から伝えるシーン。それをちゃんとホームズは受け止め、眼は潤み、有難う、有難うと二度繰り返す。やっと職務を越えてレストレードがホームズと分かち合えた瞬間なんだよね。

 このセリフになっていない部分のジェレミー・ブレッドが神級の演技。最後にぬっと手を差し出すところ、照れ隠しのバイオリンがエンディングに繋がるところ、全て「グラナダ版ばんさい!」という感じだ。

 最後、雨の中で絞首刑を知るイタリア一家の姿も、きちんと人間が描かれていて暗さにも関わらずどこか好感のもてる締めくくりになった。私的には映像化で上位に確実に食い込む一作品。

 第3シリーズ終了。