Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

グラナダ版ホームズ長編 第33話 The Adventure of the Sussex Vampire サセックスの吸血鬼

 56短編の48番目。『事件簿』収録。正典では、依頼者はワトソンの旧友で事件は再婚した妻が自分の産んだ赤ん坊にかみついて血を吸ってる、という内容だったのに、グラナダ版、まさかのストーリー大変更!!期待しないで見てみたら、それが何と!誰に聞いてもホームズ1位2位を争う「バスカヴィルの犬」(私は退屈だった)の3倍面白いじゃあありませんか!!充分星4つ★★★★いけるけど。

 第5シリーズと第6との間、ここから続く3作品は1時間半モノのスペシャル長編となっている。さあ、舞台は英国南部、サセックス。旅立ちましょう。

   

  

1)映画風オープニング『ジェレミー as ホームズ』なんて字幕が、長編作らしいグラナダTVの気合を感じさせる。

2)また情熱系・気性の激しい南米女の登場??『ソア橋』でこりごりだよ。田舎の風景と人物描写が続きやっと11分で211B登場。

3)コスプレホームズが見られるのも一瞬。“ティーカップが3日も置きっぱなし”の訳は、愛すべきハドソン夫人がご不在のため。『世界は(の犯罪は)人間だけで沢山だ」だいたいいつも依頼人をホームズが視線や手ぶりでそれとなく追い払うのだが今回の神父さんは自らそろそろおいとましなければ――といそいそとでていく。そりゃあ聖職者さまがホームズの部屋に長居するのは居心地のいいものじゃないだろうしねえ。

4)前ブログで「チェッカーズでお茶を―」のラストに触れたけれど、なんと今回も「ありますよ、チェッカーズというこぎれいな宿がね」と。ドイル氏はそんなに「チェッカーズ」を使いたかったのか??

5)田舎の駅の風景がグラナダ版ではしばしば出てくるけれど、茶の鞄一つとステッキ一つを手に持って並んで歩く二人の姿は絵になる。紳士たるものかくありたい。

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6)葬式乱入。ワトソン「邪魔しちゃ悪いよ」ホームズ「見守るだけだ」物は言いよう。

 新米新聞記者の仕事の一つとして殺人事件があったら必ず葬式に出席する、というのがある。目立たぬようにして、出席者の顔と名前をチェック、願わくば遺族側の特に悲しそうな顔をしている人の写真を撮りまくって来い、というマスト通過儀礼が存在する。(←一般論として申し上げております)何故か。犯人は必ずそのなかに居るから。エレメンタリー(初級)ですな。

7)季節は正典によれば11月。田舎の風景描写がとても詳細だし映像はそれを裏切らない。今回はストーリー主導なので、映像美だの、変な所に拘って無意味な時間を作っていないのが私的好み。

8)ワトソン初耳情報*昔ラグビーをやっていた――あ英国、医者ともなればラグビー教養程度のたしなみはあるのか。*ワトソン、昔幽霊を見たことがあった――どこで?アフガニスタンの後にコンスタンチノープルで。クリミア戦争?野戦病院?行っていたなんてこれまで述べたことあったっけ?じゃあナイチンゲールにも会ってるの?ええっと『コンスタンチノープルの陥落』って、あれは塩野七海さん。あとウンベルト・エーコの本もあった・・・Book妄想続く。

9)ホームズは正典では「ベーカー街を出る前に結論に達していた。残るのは観察と確認だけだった」と述べているけれど、グラナダでは暗中模索といった感じだった。彼も「幽霊」を見る。で今回は黒のコートがお似合い。トップハットでなく丸身も帯びていないこの帽子は、はたまた何と言う名称なのでしょうか。

10)やっと中盤50分。吸血鬼疑惑のあるストックトンさんとの対面――のあとで。「原因を突き止めることと解決することは全く別だね、ワトソン」

11)前々回ブログで取り上げた紳士グッズ「アルバートチェーン」の先っぽにホームズが何を付けてるかが判明!60分過ぎ。右側には方位磁石、左側には懐中時計でした。どちらもロンドンの紳士ご用達店で購入した高級品とお見受け。

12)ラストは「今回の話記録するのかね――世間を騒がせるだけじゃないかね」フォルクローレ的なアレンジの音楽で余韻たっぷりに。いやあ正典と全然違ったな、最後まで別物語だ。

*SSHFはじめ情報集めをしていて、なるほどストックトン氏に同情票多い気がする。私はそうは思えない。単に「イギリスの閉鎖的田舎社会の犠牲者」みたいな、きれいな物語にしたくない、読み手の主観がちょっぴりね。

*グラナダ版の『ドラマ性』は、前回も書いたとおり脚本勝ち。正典を壊さず、けれど主役二人のイメージを守りながら、やっぱり脇役がよく描けているからなのかな。あと無意味な音楽やCGで流れを邪魔しないこと。

*おまじないグッズを売るいかがわしい行商人は、「ウィステリア荘」の時ベインズ警部を演じていた役者のフレディ・ジョーンズ氏ではないか!!なんというサプライズ。

*最後に気づいた。正典ではグラナダ版ではThe Adventure of the Sussex Vampireなのに、グラナダ版はThe Last Vampyre、つまり最後の吸血鬼、となっていた。物語の大幅変更に伴い、タイトルもちゃんと変えていたんだね。

重くなりそうなので埋め込みませんが、こちらのサイトが英語字幕付きで全編youtube で見られます。 Sherlock Holmes -The Last Vampyre - YouTube

*ホームズ関連書籍も少しずつ充実させていきます。はてなはProにしていないのでカテゴリー分けでデーターベース化できず、HPも考えないといけないかなあ・・・。