Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

グラナダ版ホームズ第6シリーズ 第37話:The Adventure of the Dying Detective『瀕死の探偵』

 56短編の46番目。ストランドマガジン1913年12月号。『最後のあいさつ』収録作。

 感想を一言で――珍しく『Objection! !(異議あり)』(笑)?

 正典で好きな作品だっただけに、なんとグラナダ版、開始37分までオリジナル脚本(舞台背景を先に描く)にイライラ。正典では、ハドソン夫人が息せき切らしてワトソン博士のとこに「ホームズが死んじゃう~~早く来て~」って助けを求めに行くシーンから始まる。映像でようやくそこに辿り着いた頃には物語終盤、なんか全てわかっちゃって拍子抜け・・・これまで幾度となく、映像化によってどれだけ正典に深みを持たせ、それ以上の魅力を引き出したか――とべたほめしてきた私、今回に限っては「NO!正典に勝るものなし」の結論だな。。。グラナダ評価派のみなさん、本当にごめんなさい。

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The Adventure of the Dying Detective 英語全文収録サイト「Camden House」お世話になってます。味わいある趣のサイトでしょ。

 グラナダは脚本を書き変えただけで変な脚色をしたわけではないのです。トリックの変更だのエピソードや人物の削除も追加もしていない。そういう意味では忠実。

 でも上記サイトで、正典の物語としての流れを確認してみると分かる。この作品は「文章の流れ」が半端なく良いのだ。職人芸的というか、46番目の作品だけど手抜きなく熟練の技、という感じ。読み手の心理を一気に掴む冒頭、読者は完全にワトソンと同化。本気でホームズを心配しつつ、ページをめくる。「今回は、な、何なんだ?ホームズだからなんかあるのは分かってんだけど、でもちょっとこれ、あまりにやばすぎるって!」ドキドキ、焦燥感がちゃっかりラストまで保たれるのだからたまらない。短編小説として、完璧以上の展開っぷりなのだ。

 ところがグラナダでは37分まで、いつも通りに動きまわって捜査してるホームズ。肝心のタイトルの「瀕死」になる場面は、ほんの一瞬。そらあしらじらしいとも思っちゃう(笑)

 今回はオチビちゃんたちが大活躍。左はいつものホームズの部下たちと

File:Granada-dyin-14.jpg File:Granada-dyin-12-Marina-Savage.jpg最後「家を取り戻してくれて、ドクターワトソン、ありがと」と微笑む少女。「いやホームズのおかげなんだよ」とワトソンが返すと、少女は緊張した面持ちで「心から、御礼申し上げます」と丁寧な敬語でホームズに。この年代の子が出てくるのもシリーズでは珍しいけれど最後はなかなか微笑ましいシーンだったな。