Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

Sherlock 3-2 『 The Sigh of Three:邦題: 3の兆候』 結婚狂騒曲・先走り推理編 その2 感動スピーチ&もっと感動モファット監督インタビュー翻訳

『 The Sigh of Three:邦題: 3の兆候』 結婚狂騒曲・先走り推理編 その2はベストマンのスピーチシーンから。脚本担当のモファット監督の貴重なインタビューも。

 回想で、依頼された時のことが。「ベストマン=最高の男」――養護施設を運営する一方で時々殺人、みたいな。――古代より続く、人間の二面性よ。実際、SHもモリアーティーも、次回出てくるあの男もみんな仲良く持ち合わせている狂気の共通言語じゃん。(正典では『一番いやな男はロンドンの貧民のため25万ポンド寄付した慈善家」という有名な記述箇所)JO:「そっちの(シャーロック語)じゃなくて・・・殺人鬼は困る」

  ベスト――Jo「man」SH「 friend」がかぶるところが意外。セリフは、逆かと思ったから。え、今シャーロックのほうが・・・フレンドって言ったよね?と。なんか意外な展開。いつものキレはどうした、SH!

JOが「味はどう?」って固まりつくしたSHに聞いたのは、目玉入りティーのことかと思ったんだけど今回見直して「Friend」、これはShにとって、生まれてはじめての味だったわけで・・・本人いわく“感動と動揺で言葉にしていなかった”――「意外に、、イケるかも」=フレンド認定に対するシャーロック語での感想だったのか?

SHスピーチ開始:「ベストマンを理解できなかったのは、自分が誰かの親友になれるだなんて思わなかったから。それが世界一勇敢かつ親切かつ賢い男の、だなんて」

 Oh~、一同驚愕。

 ジョンへの感動シーン、続く。まあ用意していたとはいえSH本心なんだろう。

「ジョン、君は戦場に行った。闘った。怪我も負った。辛い別れも経験した――、この最後のやつについては、ごめん、もう一度あやまる。君は今日、妻に選んだ女性と、君によって救われた男の隣に座っている。誰より君を愛する二人の間に。メアリーと僕は決して君を失望させたりなどしない。一生かけて、そのことを証明する」(このセリフも、3-3で納得。ジョンにこう誓ったから、だからSHは・・・)

 ―――。SH,マジだわ。ハドソンさん涙。レストレードも、モリーも、そらみんな。でも当のジョン、うまいねえこういう時の演技。JO「ハグしそうになったら止めて」メアリー「いいえ、止めないわよ」

 

 *「なんかみんな様子が変だけど」(カンド―してるっつ~の)分かっていながら無視して『僕たちの事件簿』編へスピーチをすすめたいSH。

 さらに、今回わざわざ【その2】として章立てたのは、英国サイトでは放送直後からBBCやSHファンサイト、ブログで話題沸騰となった「モファット監督の、このスピーチに関するインタビュー」がある。(1月下旬ごろ)。私はTVで見た時より、この監督のインタビューを読んだ時の方が、じわじわと胸に染み入ってか~な~り、感動してしまった。


Steven Moffat on Sherlock’s Best-Man Speech -- Vulture

 そんなわけで、前からいっかいやってみたかった企画。ちょっと頑張ってこちらを要約してみます。直訳じゃなく、若干端折りますよ。でもこれを載せることは私のくだらない感想をだらだら綴るより300倍、意義がある。自分にとっても。

〈ブルーの文字のところは、監督が引用した実際のSHのスピーチです〉

1) In Sir Arthur Conan Doyle’s original Sherlock Holmes stories, John Watson and Mary Morstan get married between adventures — off-camera, so to speak. Steven Moffat, the executive producer of Sherlock, tells Vulture that he never much cared for that storytelling decision. “I remember being a 12-year-old kid thinking, Oh, why didn’t we see Sherlock be the best man? Please, can we see that? That would be the best story in the whole world, and I don’t care if there’s a crime in it or not, because it must have been the best and worst speech of all time!” he says.

 ドイルの『シャーロック・ホームズ』原作で、ジョンとメアリーが冒険の合間に結婚している (― いわゆる「カメラが回っていない時」のこと)『シャーロック』の制作総責任者であるスティーヴン・モファットは、この展開が納得いかなかった。

「12歳の子供だった僕は思ってたよ『ベストマンになったシャーロックが見られないなんて!お願いだから、見せてよ!世界でいちばんのお話になるのにね。犯罪なんか起こらなくていい、だって、それは史上最悪のスピーチだったに違いないんだ!!」

2)Fast-forward a few decades, and Moffat finally got to realize his childhood wish, with an episode built around Sherlock’s toast at Watson's wedding. Moffat, who has served as a best man himself three times (as well as a groom twice), says he’d been considering for years how the detective’s tribute to his friend might have gone down had Conan Doyle chosen to depict it; unlike Molly and Mrs. Hudson, he figured the speech would be heartfelt — even if it contained a good number of awkward moments (e.g., a comparison of John and Mary’s wedding to “the death-watch beetle that is the doom of our society and, in time, one feels certain, our entire species”).

 早送りして何十年か後、モファットはついに、子供時代の夢を叶えた。ワトソンの結婚式で乾杯の指揮をとるSHの話をつくったのだ。

 モファット監督自身も、3回、ベストマンを務めたことがある。(ちなみに新郎は2回だ)もしドイルが探偵から友への言葉を書いたとすればどんな内容だったか、随分長いこと考えてきた、と彼は言う。

 モリーやハドソン夫人の予想を裏切って、モファットはSHのスピーチは心に染み入るものに違いない ―― 気まずい瞬間おそらく何度があったとしても――と考えた。(例えばジョンとメアリーの結婚式を「 この社会のみならず全人類を破滅へと導く死のthe death-watch beetle 」と表現したり)。<注:death-watch beetle=分からず『英辞朗』で調べた!シバンムシ(死番虫:カブトムシ。deathwatchの名は、雌を引き付けるためにカチカチという音を立て、死の時を刻む迷信を生んだとのこと――笑えない。次回3話に直結しギャグになっていない・・・>

3)“I thought what Sherlock would do,” says Moffat, “is he’d sit there and think,Everyone’s gonna think I’m gonna make a right cock-up of this. Everyone thinks I’m going to screw it up. So, I’m going to make them think that, and then of course I’m going to say something lovely. And I always thought he’d do it well because he’s a genius and he cares about his mate — he wouldn’t let his mate down. I think he paced all night to make sure it was moving.” (Production designer Arwel Jones confirms as much, by pointing out that the proof of Sherlock’s real feelings can be found throughout last night’s episode, “The Sign of Three”: If you look closely in the background of Sherlock’s apartment, for example, there’s a model of the wedding venue, and on his laptop there are drafts for the design of the wedding stationery. “He loves John, and he’s a control freak, so he’s actually very involved with the wedding planning,” says Jones.)

 長いので要約します。 

 モファット曰く「SHなら座ってこう考えるはずだ『皆は僕が完全に、大失敗するに違いないと思っている。なら(そいつらには、勝手に)そう思わせてやる。そしてその後には必ず、素晴らしいことを言ってやるさ」。私はSHなら当然スピーチを卒なく完璧にこなすはずだと考えた。だって彼は天才だ、大事に思っている相棒を、失望させたなんかするはずない。確実に、感動的に仕上げるために、きっと一晩中でも部屋をウロウロしたはずだ」(番組制作デザイン担当のArwel Jones 氏も同じことを言った。SHの本音は全編隅々に現れている。221アパートの奥には「式場の模型」がある。パソコンの上に、招待状の草案が「複数」置かれている。「彼はジョンが大好きで超重症度の仕切り屋だ。なんだかんだいって、当プランニングを深く仕切ったのは彼なんだ、と氏は言った)

4)But first, Holmes kicked off his speech in spectacular train-wreck fashion:

  しかしながら、実際ホームズのスピーチは、見事なまでの大惨事で幕開け。

5)『All emotions — in particular, love — stand opposed to the pure, cold reason I hold above all things. A wedding is, in my considered opinion, nothing short of a celebration of all that is false and specious and irrational and sentimental in this ailing morally compromised world.』 

.『全ての感情、 特に愛は、僕がモットーとする純粋かつ客観的理性とは相反するものです。考察の結果、僕の意見では、結婚式などというものは病的で道徳観念が低下した現代社会における、不誠実で、見かけだましの不合理かつ感傷的な祝祭以外の何ものでもないでしょう』 

And then, the backhanded compliment to John, which Moffat says he paraphrased from Doyle’s “The Adventure of the Blanched Soldier”:ジョンに皮肉交じりの言葉が続くがこれはモファットによると元ネタ『白面の兵士』ですな。

6)If I burden myself with a little help mate during my adventures, this is not out of sentiment of caprice. It is that he has many fine qualities of his own that he has overlooked in his obsession with me. Indeed, any reputation I have for mental acuity and sharpness comes, in truth, from the extraordinary contrast John so selflessly provides. 

 僕が自身の冒険にこの小柄な仲間をわざわざ連れて行くとすれば、感傷だの気まぐれからでは決してありません。彼が自分で気付かない彼なりの美徳があるからです。実際、僕の知性と鋭利さへの名声は、今のところ全て、ジョンが僕を引き立ててくれたおかげですから」

 As Moffat puts it, that’s merely Sherlock “bullshitting.” “He always is. He doesn’t think that at all. He doesn’t think any of those things, but he wants to think that he does, just as he wants to think he’s a high-functioning sociopath,” says Moffat. “He’s not a sociopath, nor is he high-functioning. He’d really like to be a sociopath. But he’s so fucking not. The wonderful drama of Sherlock Holmes is that he’s aspiring to this extraordinary standard. He is at root an absolutely ordinary man with a very, very big brain. He’s repressed his emotions, his passions, his desires, in order to make his brain work better — in itself, a very emotional decision, and it does suggest that he must be very emotional if he thinks emotions get in the way. I just think Sherlock Holmes must be bursting! ”

 モファットは言うこれは単なるシャーロックの「たわ言」だと。

「彼はいつもそう。実際には露ほども考えて無いくせに。そう思っていると自分で思いたいんだよ。高機能ソシオパスだと思いたがっているようにね」

「彼はソシオでも高機能でもない。ソシオになりたい、でも違うよ。彼の素晴らしい点、それは途方もない高みを目指しているということ。彼はビッグな脳を持ち合わせた平凡な人なんだよ。彼は自らの脳をより機能させるため、感情、情熱、欲望といったものを抑え込んだ ― それ自体、非常に感情的な判断である。第一もし感情が邪魔だと考えるのだとすれば、彼が非常に感情的な人間であることを示しているわけだ。シャーロック・ホームズは(感情で)はち切れそうなのさ

7)And Holmes does get to the bursting point, finally, when the speech turns to some sincere words for Watson:

 スピーチは、一転してワトソンへの誠実な言葉に。ついにホームズの感情がはち切れるのが現実となる :
『The point I’m trying to make is that I am the most unpleasant, rude, ignorant, and all-around obnoxious arsehole that anyone could possibly have the misfortune to meet. I am dismissive of the virtuous, unaware of the beautiful, and uncomprehending in the face of the happy. So if I didn’t understand I was being asked to be the best man, it is because I never expected to be anybody’s best friend, and certainly not the best friend of the bravest and kindest and wisest human being I have ever had the good fortune of knowing. John, I am a ridiculous man, redeemed only by the warmth and constancy of your friendship. But as I am apparently your best friend, I cannot congratulate you on your choice of companion.』
「要するに僕が言いたいのは…僕という人間は、最大限に不愉快で、礼儀知らずで、無知で、全てにおいて最低で、僕と知り合ってしまった人間は信じられないぐらい不運だということです。僕は高潔を蔑み、美徳も分からず、目の前にある幸福が理解できません。だからベストマンになってくれと頼まれているのが僕が分からなかったとしたら、それは自分が誰かの親友になれるなんて考えもしなかったからです。それが僕の知る、最も勇敢、親切で、賢い人間の、だなんて。ジョン、僕は最低の男だ。それを変えてくれたのは、変わらない君の温かな友情だけだ。そんな僕を親友とする君の相棒を選ぶ眼を、讃えることはできないな」

『Actually, now I can. Mary, when I say you deserve this man, it is the highest compliment of which I am capable. John, you have endured war, and injury, and tragic loss — so sorry again about that last one. So know this: Today, you sit between the woman you have made your wife and the man you have saved. In short, the two people who love you most in all this world. And I know I speak for Mary as well when I say we will never let you down, and we have a lifetime ahead to prove that. Now, on to some funny stories about John...』

 「でも今ならできる、メアリー。僕が、この男が君にふさわしいという時、それは僕に送ることのできる最大の賛辞だ。ジョン。君は戦地に行き、怪我も乗り越えた。辛い別れもあった ―― 最後のやつに関しては、ほんとうにごめんね。だから聞いてほしい。今日君は、君が妻とした女性と、君が救った男の間に座っている。要するに、世界で一番君のことを愛する二人の間にいる。そして僕がこれから口にする言葉は、メアリーの言葉でもある。僕たちは君を決して、失望させたりしない。生涯をかけてそれを証明する。―――さあ、ではジョンにまつわる面白い話を…」

6)Moffat admits to tearing up while writing that last bit. “I loved writing the speech, and I don’t normally cry when I’m writing,” he says. “I don’t cry at all unless my finger’s trapped in something. I didn’t even cry when I wrote Amy and Rory’s good-bye in Doctor Who. Sadness doesn’t make me cry. I think a simple expression of devotion probably does.” 

 モファットは、ラストを涙ぐみながら書いたと話した。

「このスピーチを書くのは、好きだった。だいたい普通は、脚本を書いてる時に泣いたりしないでしょ。指を何かに挟んだりしない限りはね。『ドクター・フー』でエイミーとローリーの別れのシーンを書いた時ですら泣かなかった。

 悲しみでない、シンプルな愛情表現に、涙が出てきちゃうんだね、きっと」(終)

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【翻訳を終えて――感想 】

 要約と言ってほぼ全訳になってしまった。モファット監督の想いが感じられ、SH像がはっきりして。私が睨んでいたよりもっと、監督にとってSHは人間らしい人間で、きちんと「感情が溢れる」と断言していたのが、じぶんを認めてもらえたみたいに、嬉しかった。変だけど。この第2話というのはマジファンからぼろくそにけなされ、辛口コメントをネットで書かれる始末だったが、シャーロックにシンクロしちゃうある種の人間にとっては、非常に痛いハナシでもあって。(まあここの突っ込みはまた改めて)

 監督12の時からのシャーロックへの熱い思いには正直、負けた、と思った。だから、モノを作れる、感動を人に届けられるのだと。そのことに対して、涙が出そうだった。私もまた平凡な家庭に育ったが、志だけは高く、かかげていようとここまできた。まわりに逆の風が吹いても、自分さえ胸を張ってうつむかないで歩き続けていれば、必ず同じ思いの人間とどこかで共鳴し合えるはずだと、疑いもなく信じてた。でも叶わなかった。出会いはその人間の持って生まれた運でもあり、運は才能でもある。30半ば過ぎて、たった一人で異国に居て、こころからそう思う。

 モファット監督、こんな人間と出会いたかった。一緒にモノをつくり、汗も涙も流し、誰かとケンカしながら、仕事がしたかった。 今週のお題「憧れの人」

長くなった。その3へ。