Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

『怒りの中に始まったことは――』

Whate'ers begun in anger ends in shame.

なんであれ、怒りのなかに始まったことは、恥辱の中に終わる。

 ―――ベンジャミン・フランクリン

Anger dwells only in the bosom of fools.

怒りはおろかものにしか住みつかない

 ―――-アインシュタイン

Heat not a furnace foe your for so hot That it do singe yourself.

敵のために吹く怒りも、加熱しすぎたら自分がやけどする

  ―――シェイクスピア

*『アンガ―マネージメント』などと言うモノが流行っているみたいですが、別にそのことを書きたいのではない。

 単に今ダンスから帰ってきて、今日のレッスン3時間が、ずっと「怒り」の中に始まり、哀しみの中に支配されていたから。土曜はスタジオが近くなので、直帰するとクールダウンする間もなく10分程でひとりの寮の部屋に帰ってきてしまう。頭も、身体も、熱さを放出できず、ずっと抱え込んだままで。

*10月も半ば。やっと夜が夜らしく、暗くなり始めた。6月なんかは、まだまだこれから4時間は(22時過ぎまで)延々陽が沈まなかったのに。

*今日のダンス、後半途中で私は突然踊れなくなってしまった。4月頃、ちょうど私がこの教師Jをはじめてスタジオでみかけた時の音楽が流れたのだ。突然振りを忘れてその場に立ち尽くしてしまった。

 ――ああ、あの頃は―――

 こんなふうに、フランスに絶望する日がくるだなんて思ってもみなかった、と

 パリに、ダンスに、自分の未来に、嫌気がさすだなんて思ってもみなかったと。

 今の私は、

 もうにっちもさっちもいかなくて、

 せっぱつまって、踊りなんかやってるばあいじゃなくて、

 どうしようもなくいきづまって、もう一銭もなくて、

 それでも、いかりをぶつけて踊るしか、自分にはできなくて、何もなくて、

 ダンスを楽しいとも、喜びとも思えなくて、感情すら無いかもしれない、

 パリにもう、探したいものなんかないのに――、と。

 そんなふうに、怒りで踊って、得られるものも解決できるものも、何一つないよ。

 

 半年前は、そんなふうに、思わなかった。あの曲が、街中に流れていた時は。

 人々はあついコートを脱ぎ棄て、長く重すぎるパリの冬が過ぎ去ったhappyに、これから始まるバカンスに思いをはせ、はしゃいでいた。

 出会ったばかりのJのことを思い出して、ダンスに、パリに、

 まだ私も未来を賭けていた。少なくとも、Jと出会って、自分の失われた過去を想った。遅ればせながらも、私は救われた、生きた、どんなにみじめだろうと、世界のどこでだろうと、春は来るのだと、思ったのだ。高校生みたいに。

 その時のリミックスの曲を、今更使うなんて。涙を抑えるだけで必死だったよ、J。

 何とか曲に合わせ踊らなきゃって必死になったのだけれど。入って行くタイミングを失って、前列で、散々な結果になってしまった。ごめん。

 いろんなことが、変わって行く。いつ覚悟を決めなきゃいけないのだろう。

 嫌いになる前に。有難うと言えるうちに。それができなくて、ぐずぐずしていても時間の無駄だ。怒りだけ溜めこんだとしても、それは全て、自分のせいになる。

 パリの季節も、秋から晩秋へ。ねえJ、いろんなことがあった。たくさん伝えたいのに、そんな風に思っていることすら、あなたは知らない。