Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

歴史的・究極のミニマリスト

 『ミニマリスト』という生き方が話題らしい。そんなこと言ったら、歴史上究極のミニマリストは『ドリトル先生』じゃないですかねぇ。ドリトル先生シリーズ - Wikipedia

 ジョン・ドリトル(John Dolittle)はロフティングさんという、20世紀にアメリカで活躍した英国人小説家が書いた、お医者さん。『ドクター・ドリトル』シリーズ、今に受け継がれる児童文学です。

 ロフティングさんは、第一次大戦で、実際に心優しい「動物語」を話す動物のお医者さんに出会っていたんですね。その人からインスピレーションを受けて、このドリトル先生を生み出した。シリーズ全12巻。

 1作目の『アフリカ行き』は1920年発表。パイプ煙草に、フロックコート、シルクハット&ステッキの英国紳士。太っちょ体系じゃなければホームズなのに。音楽もできるんですよ、フルート。根が冒険家で変人ってとこも私の好きな“誰かさん”気質かも。貧民や子供であっても相手のこころに光るものがあれば、決して見下したりしない。尊重して名字の「◎◎君」と同じ目線で呼ぶんだ。

 作家ロフティングさん、だんだんこのドリトル先生、人気すぎて面倒になって来た。もうこうなったら月にでも行かせて小説強制終了。ところが「先生を月から帰らせてよ!」と読者の熱い声に負けて、結局5年後の1933年に『月から帰る』でシリーズ再開。まったく、ホームズまんまじゃないか(笑)

 このドリトル先生を急に思い出したのは、私が新聞記者1年生だった時のこと。取材先の広報室で、あーでもないこーでもないと紙の資料をひっちらかし、あちこち確認し、何重にもウラをとり、いま自分があたっている事実がた・だ・し・いというのを証明しなくては――と、ひとり大騒ぎしていた。そこへ別本社から派遣されてきた、5年上の男の先輩到着。

「どうしたんだ◎◎君(私の本名)」もちろん事態は長引きそうだったので私は一週間程度のスーツケースに着がえだの担いでいたが、彼は黒いパソコンケース一つである。

「まさか今日、帰るつもりですか、センパイ」と挨拶もそこそこに私は初対面の相手を睨んだ。彼はにやりと微笑みながら黙ってパソコンを広げて仕事にとりかかった――「君、知ってる?ドリトル先生は、鞄一つで世界中を旅するんだ」。

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 腕がよく、お金も名声も興味なし。世界のどこに行くにも、最低限の医療器具だけ愛用の皮カバンに詰めて行けばそれで十分。誰とでも、どこででも、どんな言葉(動物のね)でもお話しできる。

 そう言えば―――――ドリトル先生は、女づきあいだけは苦手だったな。