Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

カンバーバッチ主演 映画『The Imitation Game イミテーションゲーム』観て来ました

「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」の画像1 「SHERLOCK シャーロック」のベネディクト・カンバーバッチ主演。第2次世界大戦時、ドイツ軍が世界に誇った暗号機エニグマによる暗号の解読に成功し、連合国軍に勝機をもたらしたイギリスの数学者アラン・チューリングの人生を描いたドラマ。天才的な頭脳を持つがゆえに、その言動が軍上層部や仲間にも理解されずに孤立し、苦悩するチューリングをカンバーバッチが熱演。トロント国際映画祭の最高賞である観客賞を受賞し、全米各地の映画祭で多数の受賞、ノミネートを果たした。第72回 ゴールデングローブ賞(2015年)第87回 アカデミー賞(2015年)受賞。チューリングを理解し、支える女性ジェーンにキーラ・ナイトレイ。監督は、「ヘッドハンター」で注目を集めたノルウェーのモルテン・ティルドゥム。

 以前英語版の予告編をアップしたので今回は日本語を。『エニグマと天才数学者の秘密』と題して、日本では3月13日より公開予定だそうで、配給はギャガ。HPも出来ていました。


イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 予告編 - YouTube


イミテーションゲーム予告編!ベネディクト・カンバーバッチ主演! - YouTube


<公式>映画『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』オフィシャルサイト|3月13日(金)ロードショー

原題 The Imitation Game イギリス・アメリカ合作 2014年 115分

※さてフランスでは1月28日水曜公開。国立国会図書館隣の『mK2』(エムカドゥ)

MK2 Bibliothèque | MK2 という映画館で見てきました。『東宝シネマズ』みたいなところ。フランスでは、新作映画は基本的に「水曜」封切となります。ちなみに学生券7.9€。現金払いはなく、クレジットカードの自動マシーンしかありません。あとはネットで買うか。大人一般は11€近いので、なんとなく「フランスは日本の半分ぐらいで映画見られる映画天国」と勝手に思い込んでいた私は結構痛い。だって学生券なのに、日本のレディースデイよりも高いじゃん。大人なんて日本より高いよ。なんかどこかで間違った刷り込みをしてきてしまったらしい・・・。皆さん、要注意です。パリでエンタメは決して安くなんかありません。見放題ということもありません!

 ケベックでは仏語吹き替え版がありましたが、私はカンバーバッチの声が好きなので英語+仏語字幕で。眼と耳から両言語が一緒に入ってくると、英語を仏語に訳しながら聴いている感じになります。それも結構面白いです。日本語を間にまったく挟まないで変換する、という作業が。こちらはちなみに仏語字幕の予告編。


IMITATION GAME - Bande Annonce Teaser officielle VOST (2015) - YouTube

結論から言うと、大感動モノでした。朝のダンスレッスンの後だから疲れちゃうかなと思っていたんですが、大画面で音響も凄くいいサル(部屋)だったのに、日曜の昼の回だというのに、人は数えるほどしか居ません。そんなシリアス?みぞれまじりの雨が降って寒い午後だったから?

さてカンバーバッチさん、予告で見る限りはシャーロックのイメージと程遠く、髪も7・3に分けて完全アスペルガータイプの天才孤高科学者、というまたも変わり者の役かと。この人、ほんとそういう演技うまい。まあもともと演技を学んできたシェイクスピア役者でもあるわけだけど、どうしてこう一本フツーとずれているIQ高めの人間やらせるとはまっちゃうんでしょうね。ホーキング博士もやったし、BBC製作のドキュメンタリーではゴッホも演じているし。

決してイケメン役者とは思わないんですよ。カンバーバッチって、完全にファニーフェイスで、正統派二枚目には思えない。(ファンの方、ごめんなさい)不思議な顔のつくりだし、声はすっごい好きだけど、全身図を見たとき、かなり足は短く、バランスが悪い。長身のくせに、お世辞にもかっこいいとはいえないんです。シャーロックの黒髪は染めていて、くちゃくちゃパーマをかけているからよく似合っていたんだけど、ばっさり刈り込んで、ストレート陰鬱そうな、いかにも学者って感じの髪型で、猫背気味で涙もろい主役を演じているーーそんなシャーロック、見たくないわ、とも心のどこかで思っていたんですが・・・。いや、今回はカンバーバッチ、よく眼に涙を浮かべる。号泣シーンもあるぐらい。シャーロックはウソ泣きのところしか見せなかったから、こんな繊細な正面きってのシリアス演技されると、(しかもほんとによわっちく見えるので)かなり真に迫ってくる。見事になりきって、これは代表作にもなるだろう一本。

やっぱり実在の人物、そして50年明かされなかった本当の話っていうのが、ぐぐっと胸に来ます。映像も良くできていてうそ臭さがない。

タイトル「イミテーションゲーム」はもともとあの「チューリングテスト」ってやつから来ているものだと思うのだけれど、彼の人生そのものをさす言葉でもあったのではないかと。

ネタバレにならない程度に書いておくと、人工知能のなかった時代に『こうやったら作れるんじゃないか?』って初めて言ったのがアラン・チューリングっていう人。第二次世界大戦では、ナチス・ドイツと日本とイタリアが枢軸国っていう形で世界と闘ったわけですよね、その第二次大戦を決定的に勝利させたうちの1人でもあるーー。

脚本がうまい。1951年に始まる。戦争が終わってから何年かしたところですよね。マンチェスターで、このアラン・チューリングさんが警察にある疑惑で捜査をされるシーンから始まるんです。なんで数学の先生が「国家最高機密」なんだ?っていう。そこから始まる。うまいよね。そこから時代は1941年に戻って。イギリスはその頃、ナチスに包囲されていた。当然ドイツからの無線の指令があるはずで、それを先に読み解けば、対応できるだろうって。その暗号がエニグマという暗号装置。ナチス・ドイツが使ってたその暗号を解読することに成功する、そういうプロジェクトで集められた数学者たちのお話なんです。

チューリングは人間ができないものを機械にやらせればいいんだ、と思って、彼は暗号を解かないでコンピューターを作り始めるんです。超天才だから、周りは誰も彼のいっていることを理解できなくて、孤立しちゃうんだけど、まあある女性の登場とか、チューリングの青少年時代の性癖とか、あとはちょっとしたチームワークの友情とか涙とか、そういったものをちりばめて、物語は一気にぐいぐい進んでいくんですよね。

気がついたら、90分映画が限度の私が、2時間、一度も時計を見ないで、あっという間に過ぎていました。「え、もう終わりなの?」みたいな。最後が衝撃というか、まあ知ってはいたんだけど、そうだよね、そうなるしかなかったんだよね、みたいな悲痛さがあって。

完全極秘だったんですね。暗号をイギリス軍が解いていたってことは50年間、極秘だった。だからチューリングのことも最近分かったし、その数奇な運命がこうして映画化されたのは奇跡に近い。ああ、生きてこれをみられて良かった、歴史の前に人はかなわないって、そう思った。

私はキーラ・アナトレイがだいっつ嫌いなんだけど、この映画ではその「嫌」な感じが一切消えていて、ビックリした。決して知的ではないタイプの彼女なのに、この映画でははまり役だったと思う。相変わらず眉毛も黒くて濃くて似合わないんだけど。

「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」の画像3「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」の画像4

2015年、傑作の一本に間違いないでしょう。