Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

フィナンシェじゃだめだったんですか、プルーストさん(4)仏の伝統焼き菓子ググロフ

 「フィナンシェじゃだめだったんですか、プルーストさん」シリーズ。

 しばらく空いていたので、連載の趣旨を簡単に説明。そもそもフランス文学・長編『失われたときを求めて』に登場するマドレーヌに端を発します。プルーストが小説のプロローグとして『無意思的記憶』を呼び覚ますのに、紅茶に浸すのは「マドレーヌ」じゃなけりゃダメだったんですか?という無茶苦茶な疑問から。

 言い換えれば、フランス焼き菓子で、幼い頃の思い出がふと蘇るような伝統スイーツを探す旅です。「マドレーヌの代替」となるべく菓子を探せ!という使命、条件的には 1・「焼き菓子」であること 2・「紅茶」に合わせるスイーツであること(必ずしも浸さなければならない、ということにはしない) 3・アレンジ、リメイク版でなく、出来る限り文化的・歴史的に続いてきた経緯のある、誰もが知る代表的『伝統/郷土』菓子のオリジナルを探すことーー

 第4回で取り上げるのは、フランス地方菓子「クグロフ」です! 

 フランス語:Kouglof)はオーストリア、スイス、ドイツ、そしてフランスのアルザス地方の菓子 。ドイツ語ではグーゲルフップフ(Gugelhupf)、クーゲルホップフ(Kugelhopf)、オーストリアではGugelhupfまたはKugelhopf、スイスではGogelhopfなど呼ばれます。語源の由来も国や地域ごと諸説あり、発祥もオーストリアから嫁入りしたマリー・アントワネットがフランスへ持ち込んだ、あるいはキリストの誕生を祝う東方の三博士が家に泊めてもらったお礼に焼いた、などなど。

 クグロフ型(斜めにうねりのある蛇の目型)にアーモンドとキルシュヴァッサーで香りをつけた乾し葡萄を入れ、ブリオッシュ風の生地を入れて焼き上げたもの。食べる前に粉砂糖をふりかけます。フランスではドイツ国境のアルザス地方の伝統菓子とされ、町のパティスリーPâtisserie(菓子屋)やブーランジュリーBoulangerie(パン屋)に必ずといっていいほど山積にされています。お菓子というより「砂糖をかけたパン」の感覚。オーストリアなどではバター強めのケーキ的な存在感ですが、アルザスでは昔から伝統的に日曜の朝に焼き、ブリオッシュタイプの生地のものが多いそうです。

 スフレハイム村には、陶器のクグロフ型を作る窯元があり、お土産屋さんに限らず街中で色とりどりのクグロフ型が売られているのが見られます。

 

 グフロフはクリスマス、イースター、ブドウ収穫祭、結婚式、子供の誕生など、お祝い事、季節の行事の定番です。ひねった王冠型はマリーアントワネットを魅了しただけの気品があり、シンプルだからこそ、奥行きの深い味わいは、レシピの多さでも伺えます。ブーランジェリーの数だけ、家庭の数だけ、オリジナルレシピがあり、遠い記憶を呼び覚ます。やさしい「祖母の味」に相応しい存在感です。

 パリで「グフロフ」なら12区のヴァンデルメルシュ VANDERMEERSCHさん。 Stéphane Vandermeersch, un boulanger-pâtissier bien « Dorée » | painrisien 

 フィガロミルフィーユ部門で一位の店として有名ですが、グフロフもその後2013年のベストグフロフで一位獲得したそう。ステファンさんは、ラデュレで修行中、ピエールエルメに見出され、彼の下でさらに8年勉強した実力派。

週末限定200個は即売り切れ。

Kouglofs, Stéphane Vandermeersch, Paris 12è甘さ控えめ系と甘甘の2種類。

最後にこちらは動画付きレシピのサイトです。


Recette de kouglof traditionnel

 レーズン、くるみ、乾燥フルーツの刻みや、チョコチップ、アーモンドスライスなどがよく使われます。生地そのものがチョコマープルだったり、ココアだったり。日本人お決まりの抹茶味があるかと思えば、アールグレイの紅茶味は英国人のしわざ?キャラメル、メープルといった甘甘系から、ブランデーやコニャックを加えた大人のデザート風アレンジまで、素材がシンプルなだけに様々なバリエーション可能です。kotorioは、ちょっぴりバナナを加えてみたいです。

 プルーストさんシリーズ、次回第5回はあの「素材」に迫ります。