Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

フィナンシェじゃだめだったんですか、プルーストさん(6) 半熟カステラ『パォン・デロー』

 今日はホワイトデーだったんですね。既に書きましたが、フランス・及び西欧にはホワイトデーってないんです。2月14日に贈り物をされるのは女性のほう。そして女性は、もらったらもらいっぱなし。一ヵ月後?贈られたものも、レストランでご馳走されたことも、ぜんぶ忘れてるわよって(笑)パリの菓子屋のウインドーには、早くもパックス(復活祭)のための、卵形のチョコレートが並び始めています。

 さて前回は『美味しさの秘訣はバターにあり』説をでっち上げてみました。が、バターだけ言及して、もうひとつ、「アノ」素朴な素材について取り上げないのは、洋菓子を語る上で片手落ちでは・・・と。そう、何を隠そう、たまごです。

 

フランス菓子の両輪である「バター」「卵」の良質さにとことんこだわり抜いている、ことが、極めて個人的なプルースト的菓子(=紅茶にあう・思い出を喚起させると同義)」の条件です。砂糖やチョコなどコーティング系で素材の味を隠してしまうものは、いくら伝統菓子といえど今回のリストからは外れてしまうのです、ごめんねごめんね。例えば国民的ヒーローでありながらーーエクレアやマカロン、残念ながら日本で人気のタルトタタンもお砂糖強め。

 

 繰り返しますが「紅茶の香りを生かしたまま、お互い素のハーモニーを楽しめるかどうか」が最大のポイント。そこで今回から数回にわたり、ちょっとフランスを抜け出して、周辺のヨーロッパ諸国の伝統菓子をお届けします。各国、似たようなネーミングや製造法があったり、背景をたどってみれば共通点や同じような歴史に行き着いたり。まずは日本との繋がりの深いこちらの国から。

 さて日本史の時間です(笑)15世紀ごろ日本にもたらされたとされる・・・鉄砲、じゃなくて、黄色くて、ふわふわしてて、長崎が有名な、といえば「カステラ」ですね。ルーツとされているのはポルトガルの『パォン・デ・ロー』。日本のしっかりしたケーキタイプの「カステラ」とは違う「半生」タイプです。

 

見たからに新鮮な「卵」がたっぷり使われている様子。柔らか~な、やみ付きになる「しっとり感」が伝わってきそう。一口すくえばどんな大人も童心に返り、ほっぺたが落ちそうなシアワセのお味。パォンとはそのまま、パンの意。原料にバターを使っていません。仏サイトで検索すると固いタイプしか出てこず(パォン・デ・ローにも2種類あるらしい)この半生タイプのレシピ、なんと日本の旭化成さんのサイトにありました。

パォン・デ・ロー(半熟カステラ) | らくらくレシピライブラリ | 旭化成ホームプロダクツ 

 18センチのケーキ型で材料はこれだけ。 全卵・・2個 卵黄・・5個分 砂糖・・90g 薄力粉・・25g マディラ酒・・大さじ1(ブランデーなどでも良し)さらに長崎はカステラ本場『福砂屋』さんのHPに「カステラ文化館の伝来ーーそのルーツをたずねて」というサイトがあり、ポルトガル各地、8箇所の異なるパォンデーロのお店(とその製法)を写真で紹介しています。人生にどのような教訓を得るべきかといわれると困っちゃうんですが(笑)いや、ここまで渋く極められた、諸先輩方の専門家魂に乾杯!

 カステラ文化館 | カステラ文化誌

 本日の結論に参ります。とろ~り、しっとり、良質な卵を使ったこのカステラ、『紅茶との絶妙のハーモニー』に関しては期待を裏切りません。パリではどこかで手に入りそうなものですが、このように素朴なお味は、案外フランス人のお口には物足りないのかもしれません。かえって日本人の繊細な感性にマッチするのかもしれませんね。

 次回第7回、引き続き、魅力的な南蛮菓子をご紹介。