Entre la poire et le fromage 

『洋ナシとチーズの間』 フランスのよしなしごとを徒然なるままに

美食の達人 フレンチシェフ第3回 ティエリー・マルクス Thierry Marx さん

レストラン、ブーランジェリーの経営、大学での学問、職業学校の運営と奉仕活動など、「料理人」の枠を超えて活動している異色のフレンチシェフがティエリー・マルクス氏。

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2011年、パリ・マンダリン オリエンタル ホテルの2つ星レストラン「Sur Mesure」、そしてパリ北駅の構内にも朝7時から朝食を提供するレストランをオープン。
2016年には、8区にパンとサンドウィッチのカジュアルなお店を作りました。
東京では、レストランとビストロを開いています。

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オルセー大学で研究の傍ら、講演会も多く引き受けています。テーマは未来の食糧事情。栄養、健康、文化、農漁業など全て食に関する学問ができる研究室を構え指導しています。

調理師学校経営は5つ。貧困などで苦しむ人々に短期間で研修を行い、手に職をつけるための無料の学校、さらに刑務所内での調理研修なども行っています。

家のない人々に食事をだすボランティア活動「心のレストラン」で料理教室と、識字訓練を行っています。

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自身が非常に貧しい環境で育ち、若くして「手に職を」とパティスリーの道を選んだ経験を持ちます。18歳から5年間軍隊に入り、そのあと何をしたいかが全く自分でもわからなかった、といいます。

調理師免許をとり、「ルドワイヤン」「タイユヴァン」で働くうち、本当にこの職業がしたい、と思うように。
「ジャマン」でジョエル・ロブションからも大きな影響を受けます。
まずは料理の「ルール」、正しく動き、カットし、的確な火入れをする。それができなければ創作へは進めないといいます。

1988年「ロック・アン・ヴァル」で一つ星を。2011年「マンダリン オリエンタル パリ」オープン時にシェフとして着任します。

日本料理との出会いは1992年。柔道を学びに何度か日本へは訪れていたものの、フレンチとは異なる料理へのアプローチから多くを学ぶことになります。

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「私は有名なシェフの教え子でも、高い専門学校のディプロマがあるわけでもない。

良い環境で育ち、有名な専門学校を出ていたり生まれながらにして料理の環境で育った人は幾人もいる。そんな中での戦いは決して楽とは言えなかった。

確かに不平等なこともたくさんあるけれど、自分の手にないものでも、戦い抜くことです。人生で諦めることは一つもない」

出身はパリ郊外の貧しい地域。単純に、お金を稼ぎ、暮らしていきたかったのだと言います。
それでも、6歳から始めた柔道のおかげで、身体的・精神的なコントロールを身につけていたマルクス氏。戦う気力、求め続ける持久力も、いじめに負けない力も、全てスポーツで鍛えていたことが彼を支えました。

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とにかく基礎を身につけて下さい、とマルクス氏は繰り返します。
基礎がなければ、誰かの真似をすることしかできなくなります。

今はスターシェフが持ち上げられる時代。でも彼らは気の遠くなる程の時間と情熱を自身の仕事に注ぎ込み、諦めなかっただけだ。

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若い料理人で肉体的にしんどく、体力が追いついて行かないから諦めそうになっている人がいたら、それは「正しい動き」を身につけていないか、段取りが良くないか、そこが原因の事も多い。正確な動きが身につけば「サヴォワール・フェール」(フランス語で「仕事の技・技術」)体力的、身体的、精神的な制約から解放されるのですよ。そこまでで挫折してしまう人があまりに多い。そのあとはとても楽に仕事に取り組めるようになるのに。とにかく忍耐強くいてください。

そんなマルクス氏の現在の料理のテーマは、クラシックと革新。素材の味を尊重しながらも食感の工夫を探求し続けています。

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アンテナを張り、社会、自然、環境、周囲の全てに観察眼を持ち続けることが大切です。
そうすれば、毎日の仕事が活気に溢れ、飽きる事はありません。
シェフは俳優のようなもので、新しく驚きがあって、お客さまの望んだものを提案できなくてはいけない。

料理の世界では前代未聞、貧困者のための無料の職業訓練学校を創設した事でも知られています。

無料ですが遅刻厳禁、授業も厳しいです。料理とブーランジェの2コースがあり、3ヶ月集中的に訓練を受けます。学校に行くお金もなく、仕事が得られない人たちが、手に職をつけることで、貧困から抜け出す手がかりを得られるのです。

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「若いときは、辛い日々もありましたが乗り越えられると自分で信じていました」とマルクス氏。

まだまだ料理を続けるという氏、

「料理は私に元気を与え、幸せにしてくれるから」

Grands restaurants à Paris | Restaurants 5 étoiles à Paris | Mandarin Oriental, Paris

【kotorioからのひとこと】

日本語字幕のついた、パン作り動画1分30秒、ご覧ください!

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